便秘・慢性便秘症
便秘・慢性便秘症とは?
便秘は「本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な努責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」とされます。これらの症状により日常生活や身体の状態に影響を与えるようになった病態が「便秘症」と言われ、慢性的な便秘症となると「慢性便秘症」になります。
便秘は、多くの方が悩んでいる症状です。性別・加齢・身体活動・薬剤・生活習慣・体質・既往などが関与し、一人ひとりに合った対策が必要です。
分類
慢性便秘は、主に以下のように分類されます。
- 機能性便秘:大腸通過正常型、大腸通過遅延型、機能性便排出障害
- 非狭窄性器質性便秘症:小腸結腸障害型(慢性偽性腸閉塞症など)、器質性便排出障害(直腸瘤など)
- 薬剤性便秘症(オピオイド、抗コリン薬、三環系抗うつ薬など)
- 症候性便秘症(糖尿病、甲状腺機能低下症など)
- 狭窄性器質性便秘症(大腸がんなど)
診断・検査方法
問診・診察
排便の頻度や便の性状、既往歴、内服歴、生活習慣などを確認します。
血液検査
甲状腺機能や糖尿病などの全身疾患を確認します。
腹部X線(レントゲン)検査
腸内のガスや便の滞留を確認します。
大腸内視鏡検査
大腸がんや炎症性腸疾患の有無を調べます。
排便造影検査(ディフェコグラフィー)
便の固さに近い造影剤を使用し排便時の直腸肛門の状況を観察する検査です。
直腸肛門機能検査
排便時の直腸や肛門の機能を調べる検査です。
大腸通過時間測定
X線不透過マーカーを内服し、後日腹部X線を撮影します。残っているマーカーの数を確認し機能性便秘の評価を行います。
治療
生活習慣の改善
- 排便習慣:正しい姿勢でなるべく同じ時間にトイレに行くことが大切です。前かがみの姿勢が排便しやすい姿勢です。
- 運動と休息:適度な運動と良質な睡眠で活動と睡眠のバランスをとることは、排便にも良い影響があります。
- 食生活:食物繊維や水分を摂取することと、栄養のバランスがよい食事を摂取することが大切です。
内服療法
- 整腸剤(プロバイオティクス)
- 膨張性下剤
- 浸透圧性下剤
- 刺激性下剤(短期間での使用が望ましい)
- 上皮機能変容薬
- 消化管運動賦活薬
- 漢方薬
バイオフィードバック療法
骨盤底筋の協調運動障害がある場合に有効です。
外用薬(坐薬や浣腸)・摘便・逆行性洗腸法
直腸内に糞便が貯留している場合は有効ですが、直腸内に糞便が貯留していないと排便効果は高くありません。また、処置に依存してしまう可能性や粘膜を損傷する可能性があるので連用は望ましくありません。
外科的治療
便秘症の多くは保存的加療で改善しますが、それらで改善が困難な場合には外科的治療も検討されます。病態に合わせて、相談しながら適切な治療法を選択します。
当院の取り組み
慢性便秘は放置すると日常生活に大きな影響を与える可能性があります。適切な食事、運動、生活習慣の改善を心がけることが大切です。便秘はさまざまな要因で発症しますので、症状・病態に応じた適切な対応が必要です。
当院では、消化管の専門病院として便秘症・慢性便秘症の診療を行っています。便秘にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。